法要・供養
精霊棚(盆棚)の作り方と飾り方 設置時期・供え物の意味まで解説
公開日: 2026年7月22日 / 執筆: 葬儀・法要のしきたり事典 編集部
精霊棚(盆棚)の作り方を手順で解説。設置時期は盆入り前日から13日朝、片付けは16日の送り火後が目安です。精霊馬・水の子など供え物の意味、マンション向けの簡略版、盆用品セットの費用の目安、精霊棚を設けない浄土真宗など宗派差も分かります。
精霊棚(しょうりょうだな)は、お盆にご先祖様の霊をお迎えするために設ける特別な棚で、盆棚(ぼんだな)とも呼ばれます。設置は盆入りの前日から13日の朝までに済ませ、16日の送り火のあとに片付けるのが一般的です。この記事では、精霊棚の作り方の手順、供え物ひとつひとつの意味、マンションでもできる簡略版、費用の目安、そして精霊棚を設けない浄土真宗など宗派による違いまで、順を追って解説します。
精霊棚(盆棚)とは
精霊棚は、お盆の期間中にご先祖様や故人の霊(精霊)をお迎えし、おもてなしをするための棚です。位牌を仏壇から移して中央に安置し、季節の野菜や果物、故人の好物などを供えます。先祖崇拝の考え方と仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)が結びついた行事の中心となる場所で、地域によっては「先祖棚」「盆飾り」などとも呼ばれます。
設置する時期と片付ける時期
- 設置: 盆入りの前日(12日)から13日の朝までに飾り終えるのが目安です。13日の夕方には迎え火を焚いてご先祖様をお迎えするため、それまでに整えておきます。
- 片付け: 16日の送り火でご先祖様をお見送りしたあとに片付けます。地域によっては15日の夜に送り火を焚くところもあります。
お盆の期間は、7月13日〜16日に行う「7月盆」(東京など都市部の一部)と、8月13日〜16日に行う「8月盆(月遅れ盆)」の地域があります。お住まいの地域の慣習に合わせてください。
置き場所
仏壇の前に設けるのが最も一般的です。仏壇のない家や広く飾りたい場合は、床の間や座敷の一角に設けます。エアコンの風が直接当たる場所や直射日光の当たる場所は、供物が傷みやすいため避けたほうがよいとされています。
精霊棚の作り方(手順)
伝統的な精霊棚の作り方の一例です。祀り方は地方によって異なるため、菩提寺や地域の年長者に確認しながら進めると安心です。
- 棚を用意する。小机や台を仏壇の前に置きます。二段・三段の雛壇形式にする地域もあります。
- 真菰(まこも)のござを敷く。真菰はお釈迦様が病人を真菰の筵に寝かせて治療したという言い伝えから、清浄な敷物とされています。手に入らない場合は白い布でも代用できます。
- 棚の四隅に葉の付いた笹竹を立て、上部に縄を張る。縄で囲われた内側が結界となり、聖域を表すとされています。
- 縄にほおずき・昆布・そうめんなどを吊るす。ほおずきは提灯に見立てられ、ご先祖様の足元を照らす明かりの意味を持つとされています。
- 位牌を仏壇から移し、棚の中央奥に安置する。
- 香炉・燭台・花立(三具足)を手前に置き、供え物を並べる。
- 精霊馬(きゅうりの馬・なすの牛)、水の子、閼伽水(あかみず)、盆花などを配置する。
- 棚の両脇または部屋の入口に盆提灯を飾る。
マンション・現代の住宅での簡略版
集合住宅では笹竹や縄を張るのは難しいため、簡略化した形で問題ないとされています。
- 仏壇の前やリビングの一角に小さな机を置く。
- 白い布(または真菰のござ)を掛ける。
- 位牌・りん・香炉を置き、精霊馬・季節の果物・水・故人の好物を供える。
- 小型の盆提灯やろうそく型のLEDライトを添える。
大切なのは形式の完全さよりも、ご先祖様をお迎えする気持ちです。スペースに合わせて無理のない範囲で整えましょう。
供え物とそれぞれの意味
精霊棚に供えるものには、それぞれ意味が込められています。
- 精霊馬(しょうりょううま): きゅうりで作る馬となすで作る牛。割り箸やおがらを刺して脚にします。足の速い馬に乗って早く帰ってきていただき、帰りは歩みの遅い牛に乗ってゆっくりお戻りいただくという願いが込められているとされています。夏に手に入りやすい旬の野菜が使われたと考えられています。
- 水の子(みずのこ): 洗った米に、なす・きゅうりをさいの目に切って混ぜ、蓮の葉や器に盛ったもの。あらゆる精霊に施しをするための供物とされています。
- 閼伽水(あかみず): 清浄な水。器に入れ、みそはぎの束を添えて水の子に水を注ぐ作法が伝わる地域もあります。
- みそはぎ: 「禊萩」とも書かれ、穢れを祓う花とされています。閼伽水の器に添えます。
- 盆花: 桔梗・女郎花(おみなえし)・ミソハギ・ゆりなど、お盆の時期の花。棚や花立に飾ります。
- 五供(ごく): 香(線香)・花・灯燭(ろうそく)・浄水・飲食(おんじき)の5つの基本の供養。飲食としてお団子・そうめん・ぼた餅・季節の果物・故人の好物などを供えます。そうめんはご先祖様が乗る馬の手綱に見立てられ、幸せが細く長く続くようにという願いが込められているという説もあります。
費用の目安
精霊棚に必要な品は、仏壇店やスーパー、ホームセンターなどで「盆用品セット」として販売されています。金額はあくまで目安で、地域・店舗・品質により異なります。
| 品目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 盆飾りセット(真菰・おがら・ほおずき等の一式) | 一般に1,000〜5,000円程度 |
| 真菰のござ単品 | 一般に500〜2,000円程度 |
| 盆提灯(一対) | 一般に5,000〜30,000円程度 |
| 新盆用の白提灯 | 一般に3,000〜10,000円程度 |
| 精霊馬用の野菜・盆花・供物 | 一般に1,000〜3,000円程度 |
最小限の簡略版なら数千円程度で整えられ、盆提灯まで一式そろえる場合は数万円になることもあります。毎年使い回せる品(提灯・棚など)と、その年限りの品(野菜・花・食品)を分けて考えると無駄がありません。
宗派・地域による違い
精霊棚の扱いは宗派によって大きく異なります。ここは必ず確認しておきたいポイントです。
浄土真宗は精霊棚を設けない
浄土真宗(本願寺派・大谷派など)では、亡くなった方は阿弥陀仏のはたらきによって浄土に往生していると考えるため、霊がお盆に帰ってくるという考え方をとりません。したがって精霊棚や施餓鬼棚は設けず、迎え火・送り火や精霊馬も用いないとされています。お盆(歓喜会)には仏壇に打敷を掛け、お仏飯やお菓子・果物を供え、ご先祖様への感謝とともにお念仏をとなえて過ごします。
曹洞宗・真言宗などの傾向
曹洞宗や真言宗、天台宗、日蓮宗、浄土宗などでは、精霊棚を設けてご先祖様をお迎えする習慣が広く見られます。曹洞宗では13日の迎え盆に菩提寺とお墓にお参りし、提灯の明かりでご先祖様をご案内する迎え方が紹介されており、お団子やそうめん、水の子を蓮の葉に盛って供える例が示されています。真言宗では棚の飾りを丁寧に整え、僧侶に棚経(たなぎょう)をあげてもらう地域もあります。細部の作法は寺院ごとに異なるため、菩提寺に確認するのが確実です。
新盆(初盆)の場合
四十九日を過ぎてから初めて迎えるお盆を新盆(にいぼん)・初盆(はつぼん)といいます。新盆では、故人が初めて帰ってくる目印として絵柄のない白提灯を飾るのがならわしで、白提灯はその年限りで処分するのが一般的です。親族を招いて僧侶に読経してもらうなど、通常のお盆より丁寧に営む家庭が多く見られます。
地域による違い
お盆の時期(7月盆・8月盆)のほか、棚の段数、吊るす物(昆布・ほおずき・そうめんなど)、送り火の日取り(15日夜か16日か)、精霊流しや灯籠流しの有無など、地域差が非常に大きい行事です。迷ったら地域の仏壇店や菩提寺、年長の親族に尋ねるのがいちばんの近道です。
準備チェックリストと注意点
準備チェックリスト
- 菩提寺に棚経・法要の予定を確認した(新盆は特に早めに)
- お盆の時期(7月盆か8月盆か)を地域の慣習で確認した
- 棚・真菰のござ・笹竹・縄など飾りの材料をそろえた
- きゅうり・なす・割り箸(精霊馬用)を用意した
- 盆花・みそはぎ・ほおずきを用意した
- 盆提灯(新盆の場合は白提灯)を用意した
- 迎え火・送り火用のおがら・焙烙(ほうろく)を用意した
- 13日の朝までに飾り付けが完了するよう段取りした
よくある失敗と注意点
- 火の始末: 迎え火・送り火やろうそくの火の消し忘れは火災のもとです。風の強い日は火を使わず、電池式のろうそくや提灯で代用する方法もあります。集合住宅ではベランダや共用部での焚き火が禁止されている場合が多いため、管理規約を必ず確認してください。
- 供物の傷み: 夏場は食品が傷みやすいため、水の子や果物は毎日取り替えるのが望ましいとされています。
- 供物の処分: 役目を終えた精霊馬や供物は、庭に埋める・土に還すのが古くからの作法とされますが、現代では白い紙に包み、塩で清めてから可燃ごみとして出す方法が一般的です。川や海に流すのは、条例等で禁止されている地域があるため避けましょう。
- 宗派の確認不足: 浄土真宗の家で精霊棚一式を購入してしまったという例は少なくありません。飾り付けの前に自宅の宗派を確認しておきましょう。
- 直前の準備: お盆直前は盆用品が品薄になることがあります。提灯や真菰などは早めに準備しておくと安心です。
まとめ
精霊棚(盆棚)は、盆入り前日から13日の朝までに設置し、16日の送り火のあとに片付けるのが基本です。真菰のござ・笹竹と縄・精霊馬・水の子など、飾りの一つひとつにご先祖様をおもてなしする意味が込められています。マンションでは小さな机に白布を掛けた簡略版で十分とされ、費用も数千円程度から整えられます。ただし浄土真宗では精霊棚を設けないなど宗派差が大きいため、迷ったら菩提寺に確認してから準備を始めましょう。
よくある質問
Q. 精霊棚はいつからいつまで飾りますか?
盆入りの前日(12日)から13日の朝までに設置し、16日の送り火でご先祖様を見送ったあとに片付けるのが一般的です。7月盆の地域では7月12日〜16日が目安になります。
Q. マンションで精霊棚を作れないときはどうすればよいですか?
仏壇の前や部屋の一角に小さな机を置き、白い布を掛けて位牌・精霊馬・季節の果物・水を供える簡略版で問題ないとされています。気持ちを込めて供養することが本質です。
Q. 浄土真宗でも精霊棚は必要ですか?
浄土真宗では故人は阿弥陀仏の浄土に往生していると考えるため、精霊棚や迎え火・送り火は用いません。打敷を掛け、お仏飯やお菓子・果物を供えてお念仏をとなえる形でお盆を迎えます。
Q. 精霊馬はきゅうりとなすのどちらが馬ですか?
きゅうりが馬、なすが牛です。足の速い馬で早く帰ってきていただき、歩みの遅い牛でゆっくりお戻りいただくという願いが込められているとされています。