法要・供養
お盆の由来とは?盂蘭盆会の意味から過ごし方・時期の違いまで
公開日: 2026年7月22日 / 執筆: 葬儀・法要のしきたり事典 編集部
お盆の正式名称・盂蘭盆会の由来を、サンスクリット語の語源説や目連尊者の故事からわかりやすく解説。7月盆・8月盆の地域差、迎え火から送り火までの手順、新盆の香典やお布施の相場(一般に3万〜5万円程度)、浄土真宗では歓喜会として営む宗派差まで紹介します。
お盆の正式名称は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といい、その由来は仏教経典・盂蘭盆経に説かれる目連尊者の故事にさかのぼるとされています。時期は地域によって異なり、7月盆・8月盆(月遅れ盆)・旧暦盆の3つに大きく分かれます。
この記事では、お盆の語源と由来、日本での歴史、迎え火から送り火までの具体的な過ごし方、新盆(初盆)の営み方と費用の目安、そして浄土真宗など宗派による違いまでを順番に解説します。
お盆の由来──盂蘭盆会の意味と語源
お盆は、先祖の霊を家に迎えて供養する日本の代表的な仏教行事です。正式には盂蘭盆会といい、「盂蘭盆」を略して「盆」「お盆」と呼ぶようになったとされています。
語源はサンスクリット語のウランバナ(倒懸)説など諸説
盂蘭盆の語源として広く知られているのは、サンスクリット語の「ウランバナ(ullambana)」の音写とする説です。ウランバナは「倒懸(とうけん)」、つまり逆さ吊りにされたような激しい苦しみを意味し、その苦しみにある死者を救う法要が盂蘭盆会である、と説明されてきました。
一方で、近年の研究では、イラン系の言語で霊魂を意味する「ウルヴァン」に由来するという説や、ご飯を盛る器(盆)を指す言葉と結びついたとする説など、複数の見方が示されています。語源は一つに確定しておらず、「諸説ある」と理解しておくのが正確です。
盂蘭盆経に説かれる目連尊者の故事
お盆の行事の直接の由来とされるのが、盂蘭盆経(仏説盂蘭盆経)に説かれる目連尊者(もくれんそんじゃ)の物語です。あらすじは次のとおりです。
釈迦の十大弟子の一人で神通力に優れた目連尊者が、亡き母の姿を神通力で探したところ、母は餓鬼道に堕ち、食べ物を口にできず飢えに苦しんでいました。目連尊者が食べ物を差し出しても、母の口に入る前に炎となって燃え上がってしまいます。嘆いた目連尊者が釈迦に教えを請うと、「夏の修行期間(夏安居)を終える7月15日に、修行を終えた僧侶たちに飲食を供養しなさい。その功徳によって母は救われる」と示されました。教えのとおりに供養したところ、母は餓鬼道の苦しみから救われたと伝えられています。
この「7月15日に供養を行うと先祖が苦しみから救われる」という教えが、先祖供養の行事としての盂蘭盆会につながったとされています。
日本におけるお盆の歴史
飛鳥時代に始まったとされる説
日本でのお盆の起源については、日本書紀に推古天皇14年(606年)、寺ごとに4月8日と7月15日に斎(とき)を設けたという記述があり、この7月15日の法会を日本におけるお盆の初見とする説があります。また、斉明天皇3年(657年)に盂蘭盆会を催したという記録も残されています。いずれにしても、飛鳥時代にはすでに宮中・寺院の行事として行われていたと考えられています。
その後、盂蘭盆会は仏教の先祖供養と、日本に古くからあった祖霊を迎えて祀る民俗的な信仰とが融合しながら、日本独自の行事として発展していったとされています。
江戸時代に庶民へ定着──藪入りとの関わり
長らく貴族や武家、寺院を中心とした行事だったお盆が広く庶民に定着したのは、江戸時代とされています。ろうそくや提灯が普及して盆提灯を灯す習慣が広まり、檀家制度のもとで各家庭が菩提寺と結びついたことが背景にあると考えられています。
また、江戸時代には「藪入り(やぶいり)」という習慣がありました。商家などに住み込みで働く奉公人が、正月16日と盆の7月16日の年2回だけ実家に帰ることを許された休みのことです。盆の藪入りに家族そろって先祖を迎え、墓参りをする──お盆が家族の再会と先祖供養の行事として根づいた背景には、この藪入りの習慣も大きく関わっていたとされています。
お盆の時期の違い──7月盆・8月盆・旧暦盆
お盆の時期は全国一律ではなく、大きく次の3つに分かれます。
| 呼び方 | 時期 | 主な地域 |
|---|---|---|
| 7月盆(新盆・新暦盆) | 7月13日〜16日 | 東京都心部、函館、金沢の旧市街地など一部地域 |
| 8月盆(月遅れ盆) | 8月13日〜16日 | 全国の多くの地域 |
| 旧暦盆(旧盆) | 旧暦7月13日〜15日(毎年日付が変わる) | 沖縄県・奄美地方など |
このような違いが生まれたのは、明治5年(1872年)の改暦がきっかけとされています。それまでの旧暦(太陰太陽暦)から新暦(太陽暦)に切り替わった際、旧暦7月15日のお盆をそのまま新暦7月15日に行うと、多くの農村では農繁期と重なってしまいました。そこで1か月遅らせて8月に行う「月遅れ盆」が広まり、現在では8月13日〜16日を「お盆」とする地域が最も多くなっています。
各地の代表的なお盆行事
お盆の締めくくりには、地域ごとに特色ある送りの行事が営まれています。
- 京都五山送り火:8月16日の夜、「大文字」をはじめとする5つの山の送り火で精霊を送る京都の伝統行事です。
- 長崎の精霊流し:8月15日に、初盆を迎えた故人の家族が精霊船を作り、故人の霊を極楽浄土へ送り出す長崎の行事です。
- 灯籠流し・盆踊り:灯籠を川や海に流して精霊を送る行事や、精霊を迎え慰める意味を持つとされる盆踊りも、各地でお盆の風物詩となっています。
お盆の一般的な過ごし方と手順
地域や宗派によって細部は異なりますが、8月盆を例にした一般的な流れは次のとおりです。
- 8月12日頃まで:仏壇と家の掃除をし、盆棚(精霊棚)を設け、位牌・お供え・盆花・精霊馬を用意します。盆提灯を飾り、お墓の掃除も済ませておきます。
- 8月13日(迎え盆):午前中にお墓参りをする地域もあります。夕方、家の門口や玄関先で麻幹(おがら)を焙烙(ほうろく)の上で焚き、迎え火として先祖の霊を迎えます。
- 8月14日・15日:先祖の霊が家に滞在する期間とされ、朝夕にお供えを替え、家族でお墓参りをします。菩提寺の僧侶が棚経(たなぎょう)に回ってくる場合は、盆棚の前で読経してもらいます。
- 8月16日(送り盆):夕方に送り火を焚き、先祖の霊を見送ります。地域によっては灯籠流しや精霊流しで送ります。お供え物や盆棚は、送り火のあとに片づけます。
精霊馬・精霊棚の意味
盆棚に飾るきゅうりとなすの飾りを精霊馬(しょうりょううま)といいます。きゅうりは馬に見立てて「少しでも早く帰ってきてほしい」、なすは牛に見立てて「帰りはお供え物を積んでゆっくり戻ってほしい」という願いを表すとされています。地域によっては解釈が逆の場合や、精霊馬を飾らない場合もあります。
盆棚(精霊棚)は、先祖の霊をお迎えするための祭壇で、真菰(まこも)のござを敷き、位牌を中心に、季節の野菜や果物、水の子(なすやきゅうりを賽の目に刻んだもの)、そうめん、ほおずきなどを供えるのが一般的です。マンションなどで盆棚を設けにくい場合は、仏壇の前に小さな机を置いて簡略化しても差し支えないとされています。
新盆(初盆)の営み方と費用の相場
故人の四十九日が明けてから初めて迎えるお盆を、新盆(にいぼん・しんぼん)または初盆(はつぼん)と呼びます。四十九日より前にお盆が来る場合は、翌年を新盆とするのが一般的です。
新盆は通常のお盆より丁寧に営むのがならわしで、僧侶を招いて法要を行い、親族や故人と親しかった人を招いて会食をすることが多くあります。玄関先や軒先には、新盆に限って用いる白い提灯(白紋天)を飾り、故人の霊が初めて迷わず帰れるように目印とする風習があります。白提灯は新盆限りで処分し、絵柄入りの盆提灯は毎年使います。
新盆に関わる費用の一般的な目安は次のとおりです。
| 項目 | 一般的な目安 |
|---|---|
| 新盆法要のお布施 | 一般に3万〜5万円程度 |
| 御車代・御膳料 | 各5,000円〜1万円程度 |
| 棚経のみのお布施 | 一般に5,000円〜2万円程度 |
| 新盆の香典(提灯代) | 一般に5,000円〜1万円程度(近い親族は1万〜3万円程度) |
| 盆提灯 | 一般に1万〜3万円程度 |
金額はいずれも目安であり、地域・寺院・葬儀社や親族間の慣習により異なります。迷う場合は菩提寺や年長の親族に確認するのが確実です。香典の表書きは「御仏前」「御提灯代」などが用いられます。
宗派・宗教による違い
お盆の捉え方や作法は宗派によって異なります。特に浄土真宗は考え方が大きく異なるため、注意が必要です。
浄土真宗──先祖は帰ってこないと考え、歓喜会として営む
浄土真宗では、亡くなった人は阿弥陀如来のはたらきによってただちに浄土に往生すると考えるため、「お盆に先祖の霊が家に帰ってくる」という捉え方をしません。したがって、迎え火・送り火や精霊棚、精霊馬といった飾りは用いないのが基本です。
浄土真宗におけるお盆は、歓喜会(かんぎえ)とも呼ばれ、先祖をしのびつつ、仏法に出遇えたことを喜び、阿弥陀如来への感謝のうちにお念仏を申す仏縁の機会と位置づけられています。追善供養として営むのではない点が、他宗派との大きな違いです。
曹洞宗・真言宗・日蓮宗など──棚経と施餓鬼会
曹洞宗などの禅宗、真言宗、日蓮宗、浄土宗といった多くの宗派では、盆棚を設けて先祖の霊を迎え、迎え火・送り火を焚く一般的なお盆の作法が行われます。お盆の期間には僧侶が檀家の家々を回って盆棚の前で読経する棚経の習慣があり、また、餓鬼道で苦しむ諸霊に施しをする施餓鬼会(せがきえ)の法要をお盆の時期に営む寺院も多くあります。細かな飾り方や供物は宗派・寺院により異なるため、菩提寺の案内に従うとよいでしょう。
神道・キリスト教の場合
神道では、お盆に相当する時期に祖霊を祀る中元祭や祖霊祭が行われることがあり、先祖を大切にする点は仏教のお盆と共通しています。キリスト教にはお盆の行事はありませんが、故人をしのんで墓参りをすること自体は自由であり、8月に家族で墓地を訪れる家庭もあります。
お盆準備のチェックリストと注意点
準備のチェックリスト
- お盆の時期(7月盆・8月盆・旧暦盆)を地域の慣習で確認した
- 菩提寺に棚経や法要の予定を確認した(新盆の場合は早めに依頼)
- 仏壇・仏具を掃除し、盆棚・盆提灯・精霊馬・お供えを用意した
- お墓の掃除と、お墓参りの持ち物(線香・ろうそく・花・桶など)を準備した
- 迎え火・送り火用の麻幹と焙烙を用意した(集合住宅では盆提灯で代用可)
- 新盆の場合、白提灯・返礼品・会食の手配、案内の連絡を済ませた
- 自分の家の宗派の作法(特に浄土真宗かどうか)を確認した
よくある失敗例
- 時期の思い違い:帰省先が7月盆の地域なのに8月に準備してしまうなど、地域差の確認漏れは起こりがちです。両家の実家で時期が異なる場合は特に注意しましょう。
- 宗派に合わない飾り付け:浄土真宗の家で精霊棚や精霊馬を用意してしまう例があります。宗派の考え方を先に確認しましょう。
- 新盆法要の依頼が遅れる:お盆の時期の寺院は多忙です。新盆法要は1〜2か月前を目安に早めに相談するのが安心です。
- 白提灯の扱い:新盆用の白提灯を翌年も使い回すのは本来の趣旨に合いません。新盆限りでお焚き上げなどにより処分するのが一般的です。
- 火の始末:迎え火・送り火は火災の原因になり得ます。風の強い日を避け、水を用意し、集合住宅では火を使わない盆提灯などで代用しましょう。
まとめ
お盆の正式名称は盂蘭盆会で、盂蘭盆経に説かれる目連尊者が母を餓鬼道から救った故事に由来するとされています。日本では飛鳥時代に始まったとされ、江戸時代に藪入りとともに庶民へ定着しました。時期は7月盆・8月盆・旧暦盆と地域差があり、迎え火から送り火までの流れや飾りにも土地ごとの違いがあります。浄土真宗では歓喜会として営むなど宗派差も大きいため、自分の家の宗派と地域の慣習を確認したうえで、無理のない形で先祖をしのぶ時間を大切にしましょう。
よくある質問
Q. お盆の由来は何ですか?
仏教経典の盂蘭盆経に説かれる、目連尊者が餓鬼道で苦しむ亡き母を僧侶への供養によって救ったという故事に由来するとされています。この供養が7月15日に行われたことから、先祖を供養する盂蘭盆会という行事になったと伝えられています。
Q. 盂蘭盆会とはどういう意味ですか?
盂蘭盆会(うらぼんえ)はお盆の正式名称です。サンスクリット語のウランバナ(倒懸=逆さ吊りの苦しみ)の音写とする説が広く知られていますが、霊魂を意味する言葉に由来する説など諸説があります。
Q. お盆は7月と8月のどちらに行うのが正しいですか?
どちらも正しく、地域の慣習によります。東京など都市部の一部では7月13〜16日、全国の多くの地域では月遅れの8月13〜16日、沖縄・奄美などでは旧暦7月15日前後に行われます。
Q. 浄土真宗にはお盆がないと聞きましたが本当ですか?
お盆の行事自体はありますが、亡くなった人はすでに阿弥陀如来の浄土に往生していると考えるため、先祖の霊が帰ってくるという捉え方をしません。迎え火や精霊棚は用いず、歓喜会(かんぎえ)として仏縁に感謝する法要を営むのが一般的です。
Q. 新盆(初盆)の香典はいくらぐらい包めばよいですか?
一般に5,000〜10,000円程度、故人と近い親族では10,000〜30,000円程度が目安とされています。提灯代として包む地域もあり、金額や表書きの慣習は地域・親族間で異なるため、事前に確認すると安心です。