戒名・お布施
戒名の格付けと戒名料の相場 位号別一覧と宗派による違い
公開日: 2026年7月22日 / 執筆: 葬儀・法要のしきたり事典 編集部
戒名の格付け(信士・信女/居士・大姉/院号付き)と戒名料の相場を一覧表で解説します。信士・信女は一般に10万〜50万円程度、院号が付くと100万円以上の例もあり、寺院や地域で異なります。浄土真宗の法名など宗派差や菩提寺以外に依頼する際の注意点も紹介します。
戒名の格付けは、一般に信士・信女、居士・大姉、院信士・院信女、院居士・院大姉の順に高くなるとされ、戒名料(お布施)の目安も格に応じて上がります。信士・信女で一般に10万〜50万円程度、院居士・院大姉では100万円以上とされる例もありますが、金額は地域や寺院によって大きく異なります。また、浄土真宗には格付けそのものがないなど、宗派による違いも大きいため、この記事で全体像を整理して確認していきましょう。
戒名とは何か
戒名とは、仏の教えに従って生きることを誓い、仏弟子(ぶつでし)となった証として授けられる名前です。「戒」は仏教徒として守るべき戒律を指し、戒を授かる「受戒」の儀式を経て名乗るのが本来の形とされています。
現代の日本では、亡くなった後の葬儀にあわせて菩提寺の僧侶から戒名を授かるのが一般的になっています。しかし本来は、生きているうちに受戒して授かる「生前戒名」が正式な形です。生前に戒名を授かることは仏教的に望ましいだけでなく、お布施の目安を落ち着いて確認できる、自分の希望を反映しやすいといった実務的な利点もあるため、終活の一環として選ぶ人もいます。
なお、戒名は位牌や墓石に刻まれ、法要のたびに読み上げられる大切な名前です。単なる形式ではなく、故人が仏弟子として送られるための名前であることを、まず押さえておきましょう。
戒名の構成と位号の格付け
戒名を構成する4つの要素
一般的な戒名は、次の要素を組み合わせた形になっています。例えば「○○院△△□□居士」という戒名なら、以下のように分解できます。
| 要素 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| 院号(いんごう) | ○○院 | 寺院や社会に大きく貢献した人などに付けられる最上位の称号 |
| 道号(どうごう) | △△ | 戒名の上に付けられる号で、人柄や趣味・業績を表すことが多い |
| 戒名(かいみょう) | □□ | 本来の意味での戒名。2文字で表され、俗名から1字取ることが多い |
| 位号(いごう) | 居士 | 戒名の下に付き、性別・年齢・信仰の篤さなどを表す |
日常会話で「戒名」と呼ぶときは、この全体を指すのが普通ですが、厳密には中央の2文字が本来の戒名にあたります。どんなに長い戒名でも、この構成を知っていれば意味を読み解けます。
位号の格付け
戒名の格付けを実質的に決めるのが位号です。一般に、次の順で格が高くなるとされています。
| 格付け(低い順) | 男性 | 女性 | 主な対象とされる人 |
|---|---|---|---|
| 1 | 信士(しんじ) | 信女(しんにょ) | 仏教を信仰する一般の成人 |
| 2 | 居士(こじ) | 大姉(だいし) | 信仰が篤い人、寺院を支えた人 |
| 3 | 院信士(いんしんじ) | 院信女(いんしんにょ) | 院号が付く信士・信女 |
| 4 | 院居士(いんこじ) | 院大姉(いんだいし) | 寺院や社会への貢献が特に大きい人 |
院号はもともと、天皇や貴族、寺院を建立した人など、限られた人に贈られた称号でした。現在でも、寺院や地域社会への貢献が大きかった人に授けられるのが本来の姿とされています。
子どもの位号
子どもが亡くなった場合には、年齢に応じた位号が用いられます。一般に次のような区分とされています。
- 水子(すいじ): 死産や流産で生まれることのできなかった子
- 嬰児(えいじ)・嬰女(えいにょ): 生後まもない乳児
- 孩児(がいじ)・孩女(がいにょ): 歩き始めた頃までの幼児
- 童子(どうじ)・童女(どうにょ): おおむね4歳から15歳くらいまでの子ども
子どもの戒名料は大人よりも少額とされることが多く、葬儀のお布施に含めて考える寺院もあります。
戒名料(お布施)の相場
戒名を授かる際に寺院へ渡すお金は、戒名料と呼ばれることもありますが、正確には読経などへの謝礼とあわせた「お布施」の一部です。お布施は本来、サービスの対価ではなく感謝の気持ちを表すものなので、定価はありません。そのうえで、一般に目安とされる金額の幅は次のとおりです。
| 位号の格付け | 戒名料(お布施)の目安 |
|---|---|
| 信士・信女 | 一般に10万〜50万円程度 |
| 居士・大姉 | 一般に50万〜80万円程度 |
| 院信士・院信女 | 一般に70万〜100万円程度 |
| 院居士・院大姉 | 一般に100万円以上(数百万円とされる例も) |
この金額はあくまで目安であり、地域・寺院・宗派、そして寺院とのお付き合いの深さによって大きく異なります。同じ位号でも、都市部と地方、寺院の格式によって相場感が変わることは珍しくありません。また、戒名料を葬儀のお布施(読経料)と分けて包むか、まとめて包むかも地域や寺院の慣習によって異なります。
金額に迷ったときは、菩提寺に「皆さまはどのくらい包まれていますか」と率直に尋ねて差し支えないとされています。聞きにくい場合は、葬儀社や地域の年長者に地元の相場感を確認するのも一つの方法です。なお、国民生活センターには葬儀関連の料金をめぐる相談が継続的に寄せられており、事前に目安を確認しておくことがトラブル防止につながります。
宗派による違い
戒名の呼び方や構成は宗派によって大きく異なります。特に浄土真宗は考え方そのものが異なるため、必ず自分の家の宗派を確認しましょう。
浄土真宗は戒名ではなく法名
浄土真宗では、戒名ではなく法名(ほうみょう)と呼びます。浄土真宗は阿弥陀仏の救いを信じる教えで、戒律を守る修行によって悟りを目指す立場を取らないため、受戒の儀式がなく、「戒名」という言葉を使いません。
法名は、お釈迦さまの弟子であることを表す「釋(釈)」の字を冠した「釋○○」という形が基本です。信士・居士のような位号による格付けはありません。院号が付けられる場合はありますが、これは宗門への貢献に対する敬意を表すものとされています。本来、法名は生前に帰敬式(ききょうしき)という儀式を受けて授かるものとされています。
日蓮宗は法号
日蓮宗では法号(ほうごう)と呼びます。日蓮聖人の「日」の字を用いた日号(にちごう)が授けられることがあるのが特徴で、院号・道号・位号を組み合わせた構成は他宗派と似ています。
真言宗・天台宗
真言宗では、戒名の上に大日如来を表す梵字(ぼんじ)の「ア」の字を冠することが多いのが特徴です。子どもの戒名には地蔵菩薩を表す「カ」の字を用いる場合もあります。天台宗は、院号・道号・戒名・位号という標準的な構成を用い、梵字を冠する場合もあります。
曹洞宗・臨済宗(禅宗)
曹洞宗や臨済宗などの禅宗系では、院号・道号・戒名・位号という基本構成に従います。禅宗では受戒を重んじるため、葬儀の中で故人に戒を授ける授戒の儀式が組み込まれているのが特徴とされています。道号には人柄や生き方を映した言葉が選ばれることが多くあります。
戒名はどのように付けられるのか
戒名(中央の2文字)や道号は、僧侶が故人の人生を踏まえて選びます。一般に、次のような要素が反映されるとされています。
- 俗名(生前の名前)から1文字を取り入れる
- 人柄や信仰心を表す文字を選ぶ(誠実さ、温厚さなど)
- 職業や趣味、業績にちなんだ文字を用いる
- 経典に由来する文字や、仏教的に良い意味を持つ文字を組み合わせる
- 先祖の戒名との重複や、縁起が良くないとされる文字を避ける
このため、僧侶に戒名を依頼する際は、故人の人柄・経歴・趣味などを伝える時間を持つことが大切です。生前戒名の場合は本人の希望を直接伝えられるため、納得のいく戒名になりやすいといえます。使ってほしい文字がある場合は、遠慮せずに相談してみましょう。
注意点とよくある失敗例
菩提寺以外で戒名を付けるときの注意
近年は、僧侶手配サービスやインターネット経由で戒名の授与を受けられるようになりましたが、菩提寺(先祖代々のお墓がある寺院)が存在する場合は注意が必要です。菩提寺以外で授かった戒名では、菩提寺の墓地への納骨を断られたり、戒名の付け直しとお布施の納め直しを求められたりするトラブルが起こることがあります。
菩提寺の墓地に納骨する予定があるなら、戒名は菩提寺に依頼するのが原則です。事情があって他で授かりたい場合も、必ず事前に菩提寺へ相談しましょう。
格付けと供養の本質
位号の格が高い戒名を授かれば、故人がより救われるというものではないとされています。戒名は仏弟子となった証であり、供養の本質は遺族が故人を弔う心にあります。見栄や世間体のために高額な院号を求める必要はなく、故人の生き方や家族の考えに合った戒名を、無理のない範囲で選ぶことが何より大切です。
また、先祖代々の戒名との釣り合いも考慮点になります。例えば先祖が代々居士・大姉であれば、同じ格に揃えるのが一般的とされますが、これも菩提寺と相談しながら決めれば十分です。
戒名で迷わないためのチェックリスト
- 自分の家の宗派と菩提寺の有無を確認したか
- 浄土真宗(法名)・日蓮宗(法号)など、宗派ごとの呼び方の違いを理解したか
- 先祖代々の戒名の位号(格)を位牌や墓石で確認したか
- 戒名料(お布施)の地元での目安を、菩提寺や葬儀社に確認したか
- 戒名料と読経のお布施を分けるか、まとめるかの慣習を確認したか
- 菩提寺以外に依頼する場合、納骨先に事前に相談したか
- 故人の人柄や経歴を僧侶に伝える準備をしたか
よくある失敗例
- 菩提寺があるのに僧侶手配サービスで戒名を付けてもらい、納骨時に菩提寺から付け直しを求められた
- 相場を確認せずに高額な院号を希望し、その後の法要や寺院とのお付き合いの負担が想定以上に大きくなった
- 先祖の位号を確認せずに格を下げた戒名にしてしまい、親族から異論が出た
- 浄土真宗なのに「戒名料」として他宗派の相場で準備してしまい、慣習と合わなかった
- 生前戒名を授かったことを家族に伝えておらず、葬儀の際に別の戒名が付けられそうになった
まとめ
戒名の格付けは、一般に信士・信女から院居士・院大姉へと高くなり、戒名料(お布施)の目安も10万円程度から100万円以上まで幅があります。ただし金額は地域・寺院により大きく異なり、浄土真宗のように格付けのない宗派もあります。大切なのは格の高さではなく、故人らしい名前で心を込めて弔うことです。菩提寺がある場合は必ず菩提寺に相談し、疑問点は事前に確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 戒名の格付けはどのような順になっていますか?
一般に、信士・信女、居士・大姉、院信士・院信女、院居士・院大姉の順に格が高くなるとされています。ただし格付けの考え方は宗派や寺院によって異なり、浄土真宗のように格付け自体がない宗派もあります。
Q. 戒名料の相場はいくらくらいですか?
一般に信士・信女で10万〜50万円程度、居士・大姉で50万〜80万円程度、院号が付く戒名では100万円以上とされることもあります。あくまで目安であり、地域・寺院・お付き合いの深さによって大きく異なります。
Q. 浄土真宗に戒名はありますか?
浄土真宗では戒名ではなく法名と呼びます。受戒の儀式を行わない教えのためで、法名は釋(釈)の字を冠した釋○○という形が基本です。信士・居士といった位号による格付けもありません。
Q. 菩提寺以外で戒名を付けてもらっても問題ありませんか?
菩提寺がある場合は注意が必要です。菩提寺以外で付けた戒名では、菩提寺の墓地への納骨を断られたり、付け直しを求められたりするトラブルが起こることがあります。必ず事前に菩提寺へ相談することをおすすめします。
Q. 戒名の格が高いほど供養として良いのでしょうか?
格の高い戒名が故人の冥福に直結するわけではないとされています。戒名は仏弟子となった証であり、供養の本質は遺族の弔いの心にあります。無理のない範囲で、故人や家族の考えに合った戒名を選ぶことが大切です。