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臨終・葬儀の流れ

末期の水(死に水)の意味とやり方・宗派による違い

公開日: 2026年7月22日 / 執筆: 葬儀・法要のしきたり事典 編集部

末期の水(死に水)は臨終直後に故人の唇を水で潤す仏教由来の儀式です。釈迦入滅の故事という由来、脱脂綿や筆を使う手順、血縁の濃い順に行う順番、病院での流れ、湯灌を業者に頼む場合の費用の目安、浄土真宗では行わないとされる宗派の違いまで解説します。

末期の水(まつごのみず)とは、臨終に立ち会った家族や親族が、故人の唇を水で軽く潤す儀式のことです。「死に水」「死に水を取る」とも呼ばれ、亡くなった直後に、故人と血縁の濃い人から順番に一人ずつ行うのが一般的とされています。用意するものは、茶碗に入れた水と、新しい脱脂綿・ガーゼ・筆などのごく簡単なものだけです。

この記事では、末期の水の意味と由来、具体的な手順と行う順番、病院で亡くなった場合の流れ、そのあとに続く清拭や湯灌との関係、費用の目安、宗派・宗教による違いまでを順に解説します。

末期の水(死に水)とは──意味と由来

釈迦入滅の故事に由来する儀式

末期の水は、仏教の開祖である釈迦の入滅(亡くなること)の場面に由来するとされています。経典に伝えられる話では、釈迦は亡くなる間際に喉の渇きを覚えて水を求め、弟子が困っていたところ、鬼神が清らかな水を捧げ、釈迦はその水を口にして安らかに旅立ったとされています。この故事にならい、亡くなっていく人の口元を水で潤し、安らかな旅立ちを願う風習が日本の臨終の作法として定着したと考えられています。

「死に水を取る」という言葉

末期の水は「死に水」とも呼ばれます。「死に水を取る」という言い回しは、単に儀式を行うことだけでなく、最期まで看取る、臨終に立ち会うという意味の慣用句としても使われてきました。「親の死に水を取る」と言えば、親の最期を看取ることを指します。それだけこの儀式が、看取りの象徴として大切にされてきたことがうかがえます。

込められた意味

末期の水には、次のような願いが込められていると一般に説明されます。

  • あの世への旅路で喉の渇きに苦しまないようにという願い
  • 生き返ってほしいという蘇生への祈りに由来するという説
  • 死者の穢れを清めるという神道的な発想に由来するという説

いずれも断定できるものではありませんが、故人の安らかな旅立ちを願う気持ちを形にした儀式である点は共通しています。

行うタイミング──病院と自宅での違い

本来は臨終の間際、現在は臨終直後が一般的

由来の上では、末期の水は息を引き取る間際の人の口を潤す作法でした。しかし現在は医療機関で亡くなる方が多く、臨終の間際に家族が儀式を行うことは現実的に難しいため、医師による死亡確認のあと、つまり臨終直後に行うのが一般的とされています。

病院で亡くなった場合

病院で亡くなった場合は、死亡確認と医療処置が済んだあと、病室や霊安室で行います。多くの病院では看護師が案内してくれたり、脱脂綿と水を用意してくれたりするため、その場の指示に従えば問題ありません。看護師が行う死後処置(エンゼルケア)の一環として声をかけてもらえることもあります。病院で時間が取れなかった場合は、自宅や安置施設に故人を移してから、納棺までの間に行っても差し支えないとされています。

自宅・施設で亡くなった場合

自宅や介護施設で亡くなった場合は、かかりつけ医などによる死亡確認のあとに行います。葬儀社に連絡すると、末期の水の道具が枕飾りのセットに含まれていることが多く、スタッフが作法を案内してくれるのが一般的です。慌てて先に進める必要はなく、家族がそろってから落ち着いて行えばよいとされています。

末期の水の具体的な手順と順番

用意するもの

特別な道具は必要ありません。一般に次のようなものを使います。

  • 茶碗や湯のみなどの器(故人が生前使っていた茶碗を使う地域もあります)
  • 水(水道水で差し支えないとされています)
  • 新しい脱脂綿またはガーゼ、あるいは新しい筆
  • 割り箸(脱脂綿を先に巻き付けて白い糸で留める場合)

地域や宗派によっては、筆の代わりに鳥の羽や、樒(しきみ)の葉を使う例もあると伝えられています。葬儀社に依頼している場合は、セットに含まれる道具をそのまま使えば十分です。

手順

  1. 器に水を入れ、脱脂綿やガーゼを割り箸の先に巻き付ける(または新しい筆を用意する)。
  2. 脱脂綿や筆先に水を含ませ、軽く絞って水が垂れない程度にする。
  3. 故人の枕元に立ち、唇をそっと潤す。上唇を左から右へ、次に下唇を左から右へなぞるのが丁寧な作法とされています。
  4. 終わったら次の人に交代し、立ち会った人が一人ずつ順番に行う。
  5. 全員が終わったら、故人の顔や口元を清潔なガーゼなどで軽く整える。

口の中に水を流し込む必要はありません。唇を湿らせる程度で十分であり、強くこすらないことが大切です。

行う順番は血縁の濃い順

末期の水は、故人と血縁の濃い人から順に行うのが一般的とされています。目安となる順番は次のとおりです。

  1. 配偶者
  2. 子ども
  3. 故人の父母
  4. 兄弟姉妹
  5. 子どもの配偶者
  6. 孫、その他の親族

ただしこれは厳密な決まりではなく、その場に立ち会った人の状況や家庭の事情に合わせて柔軟に行ってよいとされています。順番よりも、一人ひとりが故人を送る気持ちを大切にすることが本来の趣旨です。

末期の水のあとの流れと費用の目安

清拭・エンゼルケア

末期の水が済むと、故人の体を清める段階に移ります。病院では、看護師がアルコールを含ませた脱脂綿などで全身を拭き清める清拭(せいしき)や、傷の処置・着替え・簡単な化粧を含むエンゼルケア(死後処置)を行うのが一般的です。家族が髪を整えたり手を拭いたりと、部分的に関わらせてもらえる場合もあるため、希望があれば看護師に伝えてみるとよいでしょう。

湯灌と逆さ水

自宅や安置施設では、納棺の前に湯灌(ゆかん)を行うことがあります。湯灌は故人の体を洗い清める儀式で、この世での苦しみや穢れを洗い流し、旅立ちの身支度を整える意味があるとされています。専門業者に依頼して浴槽で全身を洗う本格的な湯灌のほか、拭き清めを中心とした古式の湯灌もあります。

湯灌では「逆さ水」という作法が知られています。通常はお湯に水を足して温度を調整しますが、逆さ水では水にお湯を注いでぬるま湯を作ります。日常と逆の手順をあえて取ることで、非日常である死の儀礼を区別する意味があると伝えられています。湯灌のあとは死化粧で顔立ちを整え、死装束を着せて納棺へと進みます。

費用の目安

末期の水そのものに特別な費用はかかりません。関連する儀式を含めた費用の目安は次のとおりです。

内容主な担い手費用の目安
末期の水家族・親族特別な費用はかからない(道具は葬儀社のセットに含まれることが多い)
エンゼルケア(死後処置)病院の看護師など無料〜数万円程度(病院・施設により異なる)
古式湯灌(拭き清め中心)葬儀社・専門業者一般に3万〜5万円程度
浴槽を使う本格的な湯灌専門業者一般に5万〜10万円程度

金額はいずれも目安であり、地域・寺院・葬儀社により異なります。湯灌は必ず行うものではないため、見積もりの内容を確認し、必要かどうかを家族で相談して決めるとよいでしょう。

宗派・宗教による違い

浄土真宗では行わないとされる

浄土真宗(本願寺派・大谷派など)では、末期の水は行わないとされています。浄土真宗には、亡くなるとただちに阿弥陀仏の力によって極楽浄土に往生するという教えがあり、死後の旅路を想定しないため、旅の渇きを癒やすという末期の水の趣旨がなじまないと説明されます。ただし、地域の慣習として行われる例もあるため、浄土真宗の場合は菩提寺や葬儀社に事前に確認しておくと安心です。

神式(神道)の場合

神道には末期の水にそのまま対応する定まった儀式はないとされていますが、地域によっては同様の作法を行う例や、榊の葉を用いる例も伝えられています。神式では死を穢れととらえる考え方があり、清めに関する儀礼の位置づけが仏式と異なるため、神職や葬儀社に確認して進めるのが確実です。

キリスト教の場合

キリスト教には末期の水の習慣はありません。カトリックでは、危篤の際に司祭が病者の塗油と呼ばれる秘跡を行い、プロテスタントでは牧師が臨終の祈りを捧げるなど、水ではなく祈りによって最期に寄り添う形が取られます。キリスト教式で送る場合に末期の水を勧められたときは、教会の指導に従って断っても失礼にはあたりません。

その他の仏教宗派

浄土真宗以外の多くの仏教宗派(浄土宗、曹洞宗や臨済宗などの禅宗、真言宗、天台宗、日蓮宗など)では、末期の水は広く行われているとされています。使う道具や細かな作法に宗派・地域ごとの違いがあるため、菩提寺がある場合はその案内に従うとよいでしょう。

チェックリストと注意点

末期の水チェックリスト

  • 故人の宗派を確認したか(浄土真宗では行わないとされる)
  • 病院で行う場合、看護師・病院側の案内を確認したか
  • 器・水・新しい脱脂綿やガーゼ・割り箸(または筆)を用意したか
  • 立ち会う家族・親族がそろっているか
  • 血縁の濃い順を目安に、行う順番をゆるやかに決めたか
  • 唇を軽く潤す程度にとどめることを共有したか
  • 行えなかった場合に、安置後・納棺前に行う段取りを確認したか

よくある失敗例・注意点

  • 口の中に水を流し込んでしまう。誤って水を注ぐと体液の漏れなどにつながるおそれがあるため、唇を湿らせるだけにとどめます。
  • 宗派を確認せずに行ってしまう。浄土真宗の家で慣例的に行い、あとから菩提寺との間で気まずくなる例があります。迷ったら葬儀社や寺院に確認しましょう。
  • 順番にこだわりすぎて雰囲気が張り詰めてしまう。順番はあくまで目安であり、間違えても失礼にはあたらないとされています。
  • 感染症などで病院から制限の説明があったのに無理に行おうとする。医療機関の指示が優先されます。行えなかった場合も、安置後に改めて故人に手を合わせる形で気持ちを伝えられます。
  • 深夜の臨終で慌てて道具を買いに走る。末期の水の道具は葬儀社の枕飾りに含まれることが多く、連絡すれば用意してもらえるのが一般的です。

まとめ

末期の水(死に水)は、釈迦入滅の故事に由来し、故人の唇を水で潤して安らかな旅立ちを願う儀式です。臨終直後に、血縁の濃い人から順に、新しい脱脂綿や筆で唇を軽くなぞるのが基本の作法とされています。病院では看護師が案内してくれることが多く、行えなかった場合は安置後・納棺前でも差し支えありません。浄土真宗では行わないとされるなど宗派・宗教による違いが大きいため、迷ったときは菩提寺や葬儀社に確認したうえで、家族の気持ちに沿った形で故人を送りましょう。

よくある質問

Q. 末期の水は必ず行わなければなりませんか?

法律上の決まりではなく、行わなくても問題はありません。宗派や地域の慣習、家族の気持ちに合わせて判断してよいとされています。浄土真宗のように、教えの上で行わないとされる宗派もあります。

Q. 病院で亡くなった場合、末期の水はいつ行いますか?

医師による死亡確認のあと、病室や霊安室で看護師が案内してくれる場合が多いとされています。病院で行えなかった場合は、自宅や安置場所に移ってから、納棺までの間に行っても差し支えないとされています。

Q. 浄土真宗でも末期の水を行いますか?

浄土真宗では、亡くなるとすぐに阿弥陀仏の力で浄土に往生すると考えるため、末期の水は行わないとされています。ただし地域の慣習として行われる例もあるため、菩提寺や葬儀社に確認すると安心です。

Q. 末期の水に使う水や道具に決まりはありますか?

厳密な決まりはなく、茶碗などに入れた水と、新しい脱脂綿やガーゼ、筆などを使うのが一般的です。割り箸の先に脱脂綿を白い糸で巻き付けたものがよく使われ、葬儀社のセットに含まれていることもあります。

参考文献・出典

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